先週の土曜日、4/27まで開催中のシャンタル・アケルマン映画祭にて『一晩中』を鑑賞@ヒューマントラストシネマ渋谷。
冷たい雨の1日で、帰宅してから寝落ちしてしまった。
一週間分の睡眠不足が出たのかもしれない。というか、アケルマンの場合、それが一晩を扱ったさほど長尺ではない作品であっても、凝縮した時間を生きることになるので、私にとってはしんどい時間だったのかもしれない。
Toute une nuit
監督:シャンタル・アケルマン
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ、フランソワ・エルナンデス、マチュー・シフマン
出演:オーロール・クレマン、チェッキー・カリョ、ヴェロニク・シルヴェール、ヤン・デクレール…
1982年/ベルギー・フランス/カラー/90分
ブリュッセルの暑い夜。寝つけない人たち。恋人に電話をしたり、胸に飛び込んだり、夜の街に繰り出したり、ダイナーで言い争ったり、バーで踊ったり、夫婦で語らったり…etc。
出来事があるわけではなく、人間模様の断片が切り取られ続けていく。
かと思えば、ダンスの曲を長く聴かせたりする。
夜間撮影だから当然なのだが、ずっと暗い。様々な男女が出て来るけれど、顔はよくわからない。
人間って筒状に長いんだ、なんて阿呆なことを思いながら見続ける。
やたらドアが映る。バタンと音を立てて出たり入ったり、いきなりガバッと抱き合ったり。随分いきなり抱き合う人たちだ。一方、部屋を出て行く人もいる。
ドアと共に、階段もよく映し出される。バタバタバタと階段を上り下りする音の連続。
夜明け前に嵐が訪れ、朝になると外の喧噪が物凄い。音が過剰に溢れ出す。
ジム・ジャームッシュはこの作品について、
「すべてが一夜のうちに生じて、いろいろな人物の間を右往左往する。本当に美しい映画。彼女(アケルマン)の作品のなかでも気に入りの一本だ」と述べているらしい。
ジャームッシュにも一夜に起きる出来事を描いた印象的な作品が幾つもあることを思うと、アケルマンから受け取ったインスピレーションが生きている気がする。
同じ「一晩中」を描くにしても、当然ながらその描き手によって雰囲気は大きく異なる。本作を観ながら、私個人にとって、アケルマンは何となくしんどい気持ちにさせられるけれど、ジャームッシュのスタイリッシュさ加減は心地良くなるのだなあ…なんてことを感じていた。