forest gardenの覚書

in the forest garden:映画/芳香/文体/猫/天使・・・魔法香水、作ります。

『オッペンハイマー 』

のらりくらりとしたペースではてなブログを書いている。

前回のブログの後、監督クリストファー・ノーラン&主演キリアン・マーフィー『オッペンハイマー 』を初日に観たのだけれど、こちらに書かないでしばらく放っておいたら落ち着いてしまった。

とりあえず、今年になって劇場で観た作品リストに入れると、8本という滑り出しになる。

 

でも、まあ、虚弱体質の遠距離引っ越しの後にしては、よく頑張ったと思う。

 

で、『オッペンハイマー 』。

www.oppenheimermovie.jp

最初は3時間という長さが気になっていたのだけれど、実際に観てみるとそんなに長くは感じなかった。

登場人物が多く、たたみかけるように色々な名前が飛び交い、ノーラン流の端折り方で突き進むので、ぼんやりしているとついていけなくなるかもしれない。が、そのスリリングなスピード感によってどんどん引き込まれていく。

骨ばったキリアン・マーフィーの鬼気迫る表情、原爆の実験「トリニティ」における異様なまでの緊張感、そして妙にセンシティブな(ロマンティックというかセンシュアルというか)終盤の形容し難い空気感が押し寄せてぶっつり終わるのだ。

youtu.be

第二次世界大戦中、理論物理学ロバート・オッペンハイマーは、核開発を急ぐ米政府の「マンハッタン計画」において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。しかし、実験(トリニティ)で原爆の威力を目の当たりにし、それが実戦で投下され、恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、戦後、さらなる威力を持つ水爆の開発に反対するようになるのだが…

 

あの時代に、アメリカで研究者をやっていたら(しかも重要な立場で)、あんな風にのめり込んでいくのはよくわかる。

しかも、ドイツからのユダヤ系移民というオッペンハイマーの出自も、ヒトラーより先に原爆を作らねば…と言う思いに拍車をかけたのかもしれない。

だが、原爆に凄まじい破壊力を目にした時、オッペンハイマーは愕然とし、インドの聖典「バガバッド・ギーター」の中の「我は死なり、世界の破壊者なり」と言う言葉を思い出す。

この作品は、アメリカの立場とか、戦争における国家間の関係性とか、研究者を取り巻く政治的な(個人的な怨恨も含めた)人間関係のいざこざについて集中している。そして、ソ連のスパイを疑う赤狩りの要素が重くのしかかっていく。

これまでのクリストファー・ノーランは、観客がついて来れることを前提に、アクロバティックなほど時空を操作する奇抜な表現を勇敢に繰り出してきた気がするが、今回はそういう極端さと比べるとまともな感じがする。

クールと甘さのバランスも磨かれ、満を持してのオスカー、おめでとう。

 

1960年に東京と大阪を訪れたらしい。広島や長崎ではなくて。

(それはね、心底恐ろしいと思うのだ)

 

Bon Voyage★