先日やっとこさピーター・バラカン音楽映画祭に滑り込み(最終日の前日くらい)、限定上映は見逃してしまったけれど、未見だった『アザー・ミュージック』(1995年にマンハッタンのイースト・ヴィレッジに開店し、2016年に閉店した伝説的なレコード店のドキュメンタリー)と『ソングス・フォー・ドレラ』(ルー・リードとジョン・ケイルがウォーホルを追悼した無観客ライブの4Kレストア版)を観ることができた。
どちらも良くて、やはり(アクション映画と)音楽映画は劇場で観るのが最高だと改めて思い知ったのだが、今日のブログでは、思いがけなくそのことを体感させてくれた『アザー・ミュージック』について書いてみたい。
OTHER MUSIC
監督:プロマ・バスー、ロブ・ハッチ=ミラー
出演:マーティン・ゴア(ディペッシュ・モード)、ジェイソン・シュワルツマン、ベニチオ・デル・トロ、アニマル・コレクティヴ、ヨ・ラ・テンゴ、ヴァンパイア・ウィークエンド、ニュートラル・ミルク・ホテル、小山田圭吾(コーネリアス)…他多数
2019年/アメリカ/85分
レンタルビデオ店のスタッフとして出会ったクリスとジョシュが、タワーレコードの向かいに立ち上げた「アザー・ミュージック」は、たちまち曲者揃いの店員や常連客が集う“家”のような場所になっていく。
作中のご機嫌なサウンドに身を任せていると、個人的に、かつてよく通った渋谷の隠れ家的なレコード店の雰囲気を思い出していた。
アザー・ミュージックのスタッフは、推しの音盤に必ず手書きの解説を付けて棚に置く。客とクールでホットなやり取りが交わされる。
ここに来れば新しい何かが見つかる、別世界に出会える…etc、ここを通じてアーティストとして羽ばたいた者も多数。
911が起こり、iTunesが生まれ、タワーレコードが倒産…と目まぐるしい事件が重なる過程で、オンライン展開やメルマガなど、様々な努力を重ねてきた彼ら。
でも、売上でレコードを買って商売を続け、従業員に給料を払っても自分たちは無給の状況になっていたことを知ると、それは店じまいを決めても仕方ないかなと思った。
作中、ここでの音との出会いを「フィジカルな体験」と語る言葉を何度も耳にする。
「フィジカル」…そうなんだな。
あそこの場所はフィジカルな体験を担っていたんだ。そういったことで世界は成り立っていた。
これからも世界はどんどん変わっていくんだろうけど、きっとどこかにエッセンスは生き続けていくと思っている。