今年もTIFF(第36回東京国際映画祭)が10/23(月)に開幕。
そのオープニングで監督:ヴィム・ヴェンダース × 主演:役所広司の『PERFECT DAYS』を観た@有楽町ヒューリックホール。
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和…
2023年/日本/124分
渋谷区のアートトイレプロジェクトのトイレ清掃員として働く平井は、下町の古い木造家屋に暮らし、カセットテープの音楽を聴き、古本屋の本を読み、木の写真を撮り、植物を育て、居酒屋でTV観戦したり晩酌を嗜んだりしながら、自分なりに生活を愉しんでいる。そんな日々のルーティンがちょっとしたアクシデントで崩れたりはしても、平井は自分の規律を保ちつつ、基本笑顔で乗り切っていく…
トイレ清掃は大変な仕事だと思う。
だから、どれだけ侘しい汚れた光景が映し出されるかと覚悟していたのだが、ほぼ前情報なしで観たものだから、観始めてからお洒落トイレであることがわかり、全然ましな方だと思った。しかも平井は音楽を聴きながら車で出勤している。質素で孤独な暮らしぶりではあるが、見方によっては優雅だ。
それにしても、平井が眠る時に現れる、色がない木漏れ日の幻影みたいな夢が美しい。
早朝、近所の掃き掃除の音で目覚め、植物に水をやり身支度を整え、勤勉に口数少なく微笑みさえ浮かべて働く平井。休憩中は愛用のフィルムカメラで樹木の写真を撮り、木の妖精と目配せを交わす。
仕事を終えると、銭湯へ行き、居酒屋でくつろぎ、休日にはコインランドリーで洗濯をし、古本屋に通う。そんな生活が繰り返し描かれるのだが、日によっては予定外の出来事も起こるので、微妙に異なった反復が繰り返されていく。物静かな平井にさざめくような感情の変化が生じるのが見て取れることもある。
平井の過去について語られることはないのだが、何か訳ありな感じはする。ただ、彼は多くを語ることなく、日々の暮らしを精一杯愉しみながら生き抜いていく。
舞台挨拶で、ヴィム・ヴェンダースは「この作品をドイツ人映画監督が撮ったと思いますか? 私は撮影していくうちに、日本人の魂を得たように感じました」みたいなことを語っていた。「平井のように行きたい」とも。
日本贔屓のヴェンダースは、平井という人物像やライフスタイルを通して(しかもリスペクトする役所に演じてもらって)、日本人の魂を描きたかったのだろうか。
最近、残酷な映画が多い中で、そういった映画の途中で退場したとかいうエピソードを持つヴェンダースらしく、ほっこりと静謐で、哀愁が漂ったかと思うと、時々クスッと笑える、エレガントな映画に作り上げている。
関係者も多く、華やかな会場だった。
和やかな舞台挨拶。
資料とカセットテープの贈り物。
猫に「ただいま」
Bon Voyage★