嗅覚アーティストとしての過去作品から。
a scent of a petal of cherry brossoms (2016. April)
桜の花びらを壜に封じ込めました。
あなたにとっての桜の匂いを思い浮かべてみてください。
空想の中で、あなたの桜はどんな風に匂い立ちましたか?
からりと晴れ渡った午後の桜だったでしょうか?
それとも、小雨が降りしきり、はらはらと散り濡れる桜でしたか?
あるいは、夜空にぽっかり浮かぶ月の光に照らされ、密やかに香っていたのでしょうか?
私にとっての今年の桜は、壜に封じ込めることなく、自由に、そのまま風に流しています。やがて土に還るのでしょうか。
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こんな風に、壜などに詰めた空気や物質を展示し、「あなたのとっての〇〇の匂いを想像してください」といったインスタレーションを試みていました。
そして、その想いを書き留めていただいたりもしていました。
今年のあなたの桜は、どんな風に匂っていますか?
実は、お花見の時などに桜の匂いを感じたという記憶はほとんどなかったりします。
ごくわずかな香りはあるようですが、人間の嗅覚ではあまり感じることはできません。
桜はバラ科ではあるのですが、バラのようには香らないようです。
ただ、ニオイザクラ(オオシマザクラやヤマザクラをかけ合わせた品種)は香りを楽しむこともできるのだとか。現在では千代田区駿河台の桜並木に植えられているそうです。↓このサイトで教えていただきました↓
桜のシーズンによく出回る桜商品。実は、この桜の香りの正体は、「クマリン」と呼ばれる芳香物質のこと。桜の花びらや葉っぱを塩漬けにした時に、桜が持つ糖分と塩が反応して分離し、「クマリン」という芳香物質が香るのです。桜餅を食べる時に、桜餅を包んでいる葉っぱでめいっぱい感じることができます。
桜の花びらの塩漬けをお湯の入ったマグカップに浮かべると、即席アロマ蒸気浴が楽しめますね。
私が天然精油で桜の香りを創香する時は、桜に含まれている成分の1つ「ベンズアルデヒド」というアーモンド様の芳香成分を有するラベンダーをよく用います。ベンゾインやバニラを使ったり、クマリンたっぷりのトンカビーンズなども上手く加えると有効ででしょう。
ラベンダーはウォータリーな感じもあり、春先のみずみずしい雰囲気や、周囲の植物の存在も演出できるので、ラベンダーを軸にして、花蜜のような甘みを足したり、樹木感を加えたりして、桜だけでなく春の饗宴として表現します。
また、久しぶりに春の香りを創香してみようかな、と思います。
色々調べていたら、実際に桜の香気成分を分析しているデータが見つかりました。
ロマンティックな視点だけでなく、現実的な視点も併せ持っておくのは有意義なことです。
何と、私の部屋の窓から、桜だけでなく満月も見渡せることに気づきました。
今宵、優雅に過ごしたいと思いまする。