このところ足を運んでいた「シャンタル・アケルマン映画祭」だけれど、現在はPART2の「シャンタル・アケルマンをめぐって」になり、場所も東京日仏学院に移って21日まで開催中だ。www.institutfrancais.jp
そんなアケルマン祭りで、先日、『ジャンヌ・ディエルマンをめぐって』というドキュメンタリーを観たので、そのことについて少し書いてみたい。
Autour de Jeanne Dielman
監督・撮影:サミー・フレイ
編集:シャンタル・アケルマン
出演:デルフィーヌ・セイリグ、シャンタル・アケルマン…
1975年製作(編集は2004年とかいうテロップが最後に流れる)/フランス/78分
『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(1975年)の撮影時に、主演女優デルフィーヌ・セイリグの恋人だったサミー・フレイが撮影し、アケルマンが編集したという本作。メイキング風景と共に、インタビューが差し挟まれる。
24歳の監督アケルマンに対して、42歳の大女優セイリグが、なぜそのように演じるのか? ひとつひとつを問い、アケルマンは辛抱強く穏やかに説明する。そんな光景がひたすら続く。
「あなたが話してくれないとわからないの」とセイリグは繰り返す。
だからこそあれほど集中力の高い作品が生まれたのだと実感させられるドキュメンタリー。
どんな監督も若い頃はベテラン俳優からいびられたりするから大変そうだなあ…と同情してしまいそうになるが、どうもそういうわけではなく、セイリグは意見を出し合えるこの現場が楽しくて仕方なかったみたいである。
だが、終盤、音響スタッフから失礼な対応をされ、セイリグは男性優位の現場の体験がどれほどあったのか、そこでもそういう物言いをしていたのかどうか問いかけ、「10年後に会いましょう」と言う。
果たして、10年後、『ゴールデン・エイティーズ』で再会できたのだろうか?
私は立場に関係なく、相手に自分の考えをハッキリと伝えるセイリグ(フェミニストであることも本作で知った)に対して共感したのだけれど、彼女が58歳という若さで肺癌によって亡くなったのは、本作でもしょっちゅう煙草を吸う姿が映し出されていたが、色々と無理を重ねて生き抜いてきたからだろうかと思わずにいられなかった。