つい先日、マーティン・スコセッシの最新作『キラーズ・オブ・フラワームーン』を観たのだけれど、それについて書く間もなく、東京フィルメックス2023が開幕してしまった。
なので、とりあえずFILMeXについての簡単な一言感想みたいな日記を書いてみたい。
※ただ、開会式に先立ち11/19(日)に上映されたオムニバス『広島を上演する』や、11/26(日)昼のワン・ビン『青春』は体調不良でパスしてしまった。
実は、これを書きかけていたのは授賞式+クロージング上映『命は安く、トイレットペーパーは高い』へ向かう地下鉄の中だったが、続きを書いている今は、翌日早朝の新幹線の中である。何とも慌ただしい日々であることよ…
結局、受賞した作品(最優秀作品賞『黄色い繭の殻の中』、観客賞・審査員特別賞『冬眠さえできれば』、学生審査員賞『ミマン』)は観ていないのだけど、ホン・サンスやワン・ビンが良かったので、私的には大満足な今回だった。
そんなわけで11/22(水)から。
★『水の中で』
監督:ホン・サンス
全編アウト・オブ・フォーカス(ピンボケ)による実験的な作品。淡々と進んでいくのだが、ユラユラゆらめいて、まるですでに水の中にいる夢のような感触の作品。
仲間と3人で映画を撮ろうとする主人公。日常会話や所作や出来事を意識すればするほど微妙な感覚が集積し、そういったすべてが曖昧な中に溶けていく。
★開会式
今回、国際審査員を務めるワン・ビンが意外にも背が高いことに改めて気づく。
(小柄な人だと思い込んでいたのだ)
★オープニング作品
『About Dry Grasses』
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
赴任地に不満を抱える美術教師の男性が主人公。
偏狭でプライドが高く、生徒に感情を爆発させたりする。コケティッシュな女生徒に目をかけたり、生徒から告発されたり、同僚男性や障害のある女性教師との関係などを絡めて、彼の詩的な独白と共に長くネチネチと描かれる。
最後まで観て、ふぅと一息。
11/23(木)
★【特別上演】『GIFT』
あまりよく調べずに(良くないことだ)「高いな〜」と思いながら購入したら、石橋英子の演奏を前提とした無声映画を上映しながら、彼女が演奏するという演目だったのだ。濱口竜介はビデオでのご挨拶のみ。
森林の自然破壊にまつわる神秘的な映像と即興的な要素の強い演奏。
上演後、石橋さんや脚本家などのトークあり。
色々な試みは良いと思うけど、パフォーマンスは個人的にもっと狭い空間で体験したかった気がする。映像よりも演奏よりも朝日ホールの座席の座り心地の窮屈さが勝ってしまった感じ(私は)。
11/25(土)
★『火の娘たち』
監督:ペドロ・コスタ
3つに分割された画面に3人の女性が映し出され、火山が身近に迫るそれぞれの場所で苦悩や不屈の精神について歌う、8分間の作品。
始まる前に、監督自身の指示により、字幕が非常に小さい旨のアナウンスがあった。
…実際、全然読めなかった〜^^;
★『黒衣人』
監督:ワン・ビン
ほぼ前情報無しで観始めたら…
全裸の年老いた男性が登場し、飛行態勢のようなポーズを取ったり、へたり込んでうめいたり、これまでの半生…中国の共産党政権下での音楽家としての苦難などについて激しく語り続ける。
そして、その間、強烈な音楽が響き渡っている。
このまま最後まで突き進むのだろうか…
…突き進むのだった!
(さすがワン・ビン!)
上演後のトーストにもワン・ビン登壇。
全裸の人物は、現代音楽家・王西麟(Age86)で、撮影はカロリーヌ・シャンプティエ。ワン・ビンの個人的なリスペクトによる贈り物のような作品だという。
いやあ、凄かった。
11/26(日)
★授賞式
受賞者と審査員の皆さん。
★クロージング作品
『命は安く、トイレットペーパーは高い』
監督:ウェイン・ワン
(パンフレットから引用)
1989年の作品に、1996年に香港で追加撮影された追加映像が組み込まれた、監督自身による2021年の最終カットに準拠したデジタル修復版。
香港ギャングやファム・ファタールが登場する、ネオノワールの設定を借りて構築された“ドキュ・フィクション”映画。
監督本人が「若かりし頃で、怒り狂って撮ったので、不愉快なところがあれば席を立ってください」と言うくらいパワーがあり、映画のルールを破壊するエネルギーに満ちている。
上映後Q&Aも盛り上がり、この場にいることを監督自身が喜んでいて、こちらも元気がもらえる時間だった。
駆け足だったけど、取り急ぎ。
Bo Voyage★